先輩にばれないように小さな溜息を吐いて、振り返ろうとしたところで。
「あんま愛想振りまくなよ」
ボソッと零れた先輩の言葉。
「…ほら、早く行け」
シッシッと手を振って追い払うようにしながら、チラッとあたしを見た先輩と目が合って。
フッと優しく笑ってくれたのは見えた瞬間に、あたしも思わず笑顔になった。
そこに『頑張れよ』なんて言葉まで付け加えられちゃったら。
そりゃあもう、張り切らないわけにいかないじゃない?
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
緩んだ顔のままで、教室に入ってきた人たちをお出迎えする。
もちろん満面の笑みで。
「……ありえない」
「先輩も大変ですね」
いつの間にか先輩の近くにいた美帆が、そんなあたしを見つめながらフフッと笑う。
「まあ、うちのナンバーワンなんで。あと少し我慢してください」
「あれってわざと?」
「いいえ、いたって真面目に頑張ってるだけですよ」
「…まあそうだろうな」
はぁ…と溜息を吐きながらも、その瞳は優しく、真っ直ぐに見つめ見守っているようにも見えた。

