「お帰りなさいませ、ご主人っ…あ」
美帆のその少し間抜けな声に、みんなが振り返る。
「えっ、何、葵!?」
吉良先輩に手を引かれながら教室の中を横切るあたしを見て、みんなが驚きで目を丸くしているのがわかった。
それもそうだ、あれだけ“嫌い”だと言ってきた先輩に手を引かれて、真っ赤な顔してるあたしがそこにいるのだから。
恥ずかしさと、嬉しさと、ほんのちょっとの優越感。
先輩と手を繋いでるんだぞ、なんて見せびらかしたいあたしは性格悪いのかも。
でも、人前で堂々とあたしに触れてくれる先輩をみて、今すごく幸せだ。
教室の隅っこの空いてる席に着いて、イスにドカッと座った先輩と目が合った。
いつもは見下ろしている瞳が、今はあたしを見上げている。
それだけで、ドキドキしてるあたしは、どれだけこの人に魅せられているのだろう。
そんなことを思っているあたしとは裏腹に。
先輩はあたしの頭の先からつま先までをゆっくりと見ながら、はぁ…と大きく溜息を吐いた。

