◇ヌードで魅せて◇



だけど、それ以来先輩に会うこともなく。

吉良先輩と会ったあの日から今日まで、まったく音沙汰もないまま5月が終わった。


6月に入ると、校内は文化祭の準備でバタバタとし始めて。

授業中にも関わらず、校内には活気のある声が飛び交っていた。


2年になって最初の大きな学校行事。

誰もがみんなはりきって、ヤル気満々で。

あたしのクラスはメイド喫茶をすることに決まって、メニューや衣装の話で盛り上がっていた。

クラス中でワイワイ楽しく忙しい日々を過ごしていくうちに。

あたしの頭からはスッカリ先輩のコトも、その言葉もすっかり忘れ去られていた。


だって、嫌ですって言った。

モデルなんて承諾してないもの。


この広い校内。

先輩はあたしの名前もクラスも知らないはずだし。

そうなれば、あたしを探し出すこともできないだろう。


廊下でバッタリ…なんて、今までそう滅多にあることじゃなかったから。

そんな不安にも思っていなかったし。

それに、きっと先輩のほうがあたしに言った言葉を忘れてるような気がする。

ただの嫌がらせで。

そのときだけの言葉。

そのくらい現実味のない言葉、出来事だった。


気にしない。

うん、気にしても仕方ない。