◇ヌードで魅せて◇



「さっき…ここにいた?」


先に話し出したのは先輩だった。

振り返ったことであっさりと離されてしまったあたしたちの手。


空気に触れて少し冷たく感じるのは、やっぱり手汗をかいていたからだな…なんて全然関係ないことを思う。


「何のことですか?」

「……葵」


突然名前を呼ばれて、ドクンと心臓が跳ねた。


「葵、って聞こえたから」


先輩、ちゃんとあたしの名前覚えてたんですね。

そう思うのは、今までちゃんと名前を呼ばれたことなんてなかったから。


「大丈夫ですよ、誰にも言いません」


ここで誰と何をしてたかなんて、誰にも言わないし、言いたくもない。


「大丈夫、黙ってますから」

「何を?」

「だから先輩が…――」


えっ…


作り笑いのあたしを見据えていた先輩が急に顔を顰めたと思えば。

腕を引かれグラリと視界が傾いて、そのままの勢いで壁に押さえつけられる。


その痛みに顔を歪めるあたしを、至近距離まで迫った先輩が冷めた瞳で見下ろしていた。