◇ヌードで魅せて◇



「話がある」


低くて少し擦れた声。

ちょっと冷たさを感じるそんな声色。


「逃げるな」



ねぇ、先輩。

声が、少し震えてるよ?


「何ですか?」


振り返ることも出来ず、あたしの手を握るその手を見つめたまま呟いた。


目の前で重なった二人の手。

震えてるのは、あたし? それとも先輩?


離してもらえない手を引かれて、そのまま先輩の後をついていく。

嫌だったら振り払えばいいのに。

嫌だって暴れればいいのに。



連れて行かれたのはあの部屋の前だった。


もともとそんなに人通りのない場所だけど、今はみんな前夜祭で体育館にいるからいつも以上にシーンと静まり返っていた。


二人の足音と、二人の息遣いまで聞こえる。

遠くのほうでまた軽音部の演奏が聞こえてきた。


ここにいるのはあたしと先輩の二人きり。

変な緊張で手汗がすごいから離して欲しいんだけど。

なんて思いながらも、先輩のその大きな手を振り払うことが出来なかった。