有無を言わせない威圧感と。
真っ直ぐに射抜くような瞳。
「じゃ、よろしく」
そう言って部屋を出て行こうとする先輩に慌てて手を伸ばす。
その手は空ぶって、先輩に届くことはなかった。
「い、嫌です、脱ぎません!」
精一杯否定するあたしの言葉なんて、まったく聞こえていないのか。
振り返ることなく、そそくさと部屋を出て行く。
掴みそこねた手は宙を彷徨い。
ドアを開けたせいで、眩しいくらいの外の光に目を細めて。
そこに浮かぶ真っ黒なシルエットの先輩の背中をただ呆然と眺めていた。
「…い、意味…わかんない……」
唖然として、しばらくその場から動くことなんて出来なかった。
きっと、昼休みの会話を聞かれていたんだ。
あたしが先輩のことを悪く言ってたから、だからその当て付けで。
ヌードモデルなんて、そんな馬鹿げだことを言ってあたしを困らせようって。
人にあまり興味を示さない先輩なのに。
どうしてあたしはこんなことになっているのだろうか。
……人は撮らないんじゃなかったの?
グチャグチャの頭の中。
無理、無理に決まってる。
モデルなんてできるような容姿でもないし、ましてやヌード、できるわけがない。
そう思っているのに。
そんな思いとは裏腹に、ほんの少しの興味が芽生えた瞬間でもあった。
先輩が撮ったあたしの写真を、見てみたい…なんて思ってしまう自分がいた。

