「まぁ……熱い風呂も夏も好きだし、夏は特に部活でしごかれたし、慣れの問題じゃないか?」

「……そういうもんなのか?」

浴衣に着替えて風呂場を後にする。廊下を髪を拭きながら歩いていると、2人の腹の音が同時に鳴った。そういえば、俺らはまだ夕食を食べていないことをすっかり忘れていた。

「……はははっ、そういえば、飯まだだったな。腹減ったぁー!」

「ははっ……腹がすくのも忘れるくらいのことばかりだったもんな。さて……どうするか。」

「どうするか?」

「いや、何作ろうかなって……。」

「お前晩飯作る気だったのかよ!?ほんとお前ってハイスペックだなー……今日はシゲが作ってくれるから、お前は何もしなくて大丈夫だって。」

「そうか……そういえばここは、俺ん家じゃないんだったな。」

腕を組み、自分の着ている浴衣を見る。浴衣の間から見える火傷跡を撫で、ふっと口角を上げた。

「これも……なにかの縁かもな。」

「え?」

「いや、なんでもない。早く夜ご飯食べよう。」

「おい、そっちじゃねぇよ。こっちだ。」

「っ……お前の家は迷路みたいだな。どこに何があるかさっぱりだ。つか、普通こんな広くないし。」

「俺もそれは思ったわ。俺だってまだ行ったことねぇとこあるんだぜ?この家マジ広すぎだぜ。」

軽く笑いあった後、シゲの料理が待つ部屋へと向かった。やっぱり我が家の飯は最高だ。

「────っ……旨い……!」

「そう言っていただけると、とても嬉しいです!まだおかわりありますので、たくさん食べてくださいね。」

「シゲー!飯、おかわりー!」

「はいはいっ。」

シゲはとても嬉しそうに、ご飯を盛り付けた。今日の晩飯は、かなり遅い時間になってしまったが、相変わらずシゲの作る飯は絶品だった。

「あの、盛重さん……このおかずの作り方、教えてもらってもいいっすか?」

「はい、いいですよ。とっても簡単なので、お弁当とかにも使えると思います。これは……。」

『……楽しそうだな……雨……シゲもすげー嬉しそう。』

まるで、主婦同士がレシピを交換しあっているような光景だった。双方がとても幸せそうにしているのを、俺は席から見守る旦那のようなポジションで見ていた。

「あっ!もしよければ、明日のお弁当を私が作ってもいいですか?というか、ぜひ作らせてください!」

「えっ……いいんすか?」

「はい!もちろんです!」

「じゃあ……お願いします。ありがとうございます。」

黒永はぺこりとシゲにお辞儀をした。俺は頭の中で『盛重の主婦度が1アップした。』と呟き、吹き出しそうになった。

『くくっ……どんどんとオカンポジになってくなぁシゲは……。』

俺の母さんは、親父とかなり歳が離れている。確か10歳ちょい下ぐらいだったはずだ。そんな若いうちから子育ては大変だろうと思い、シゲが母親変わりに色々なことをしてくれていた。だからシゲは様々な家事をこなし、オカンのような存在になっている。余談だが、元々大阪に住んでいた母さんに、親父が一目惚れをして今に至る。その当初母さんには恋人がいたらしいが、母さんも親父に惚れて付き合ったらしい。

「────ご馳走さまでした。」

「ごちそーさんっ。はぁー食った食ったぁ。」

「お2人とも、いい食べっぷりでしたねぇ。明日の朝ご飯が楽しみですよ!」

「おう!期待してるからな!」

俺は片付けの手伝いをしながら、シゲの肩を叩いた。

「任せてください!腕によりをかけて作りますよぉ!明日は、何時に起こしますか?朝練などは?」

「んー……多分ねぇ思うが……。」

「俺もないっす。」

「じゃあ明日は7時ぐらいに起こしますよ。ちゃんと朝ご飯も食べて欲しいので。若、ちゃんと起きてくださいよ?毎回遅刻ギリギリじゃ、カッコつかないでしょう?」

「うぐっ……うるせぇなぁ……分かってるっての……。」

そんな会話をしていると、黒永がしっかりと聞いていたようで、話の輪に入ってきた。

「お前……自分で起きろよ。」

「起きらんねぇんだよ……布団が心地よすぎて……。」

「分からなくもないが、仮にも俺らは高校生だぞ?しかももうすぐ卒業を控えた。」

「テメェもシゲの味方かよ!」

「味方もなにも、常識だろ。社会人になったらどうするんだ?」

「黒永君、もっと言ってやってください。」

「くっ……痛いとこつきやがって……!」

皿を拭きながら、布巾をギュッと握りしめた。なにも言い返せなかったからだ。こんな普通の会話でも、なんだかとても楽しく思えた。あっという間に片付けは終わり、シゲに見送られて俺の部屋へと向かった。

「────なぁコウ、聞いていいか?」

「ん?」

「俺はどこで寝ればいいんだ?」

「あ?んー……俺のベッドじゃダメか?」

「野郎2人じゃキツくないか?」

「大丈夫大丈夫、あのベットツインベッドだから。」

「え……なんでツインベッドなんだよ。」

「知らねぇけど、なんか前はほかの誰かが使ってたらしいがまぁ……そんな深い意味はねぇんじゃねぇか?ちゃんと考えたことねぇけど。」

「ふ、ふーん……。」

黒永は何かを察したように話を終わらせた。また長い廊下を歩くと、俺の部屋へとたどり着いた。

「んーっ……ねみぃ……。」

大きく伸びをしながら部屋へと入ると、大きすぎるベッドに倒れ込む。ギシッとスプリングが音をたてて、俺の体を支える。

「……コウ……ほんとに、無防備すぎるぞ……仮にも、恋人と2人きりでいること……忘れんなよ。」

「えっ……なんだよ……。」

入口から動かない黒永の方を向こうと、くるりと向きを変えた。シーツと擦れて、浴衣が乱れる。あらわになる太ももを見ると、黒永はサッと首の向きを変えた。

「っ……俺はソファーで寝る。」

「えっ!?なんでだよ!」

「……俺が何するか分かんねぇからだ……下手したら、お前を傷付けるかもしれないし……。」

「はぁ……?何言ってんだよ、お前はそんなことはしねぇ、絶対……っ……それにっ……。」

「……?」

俺は黒永の言いたいことが分かる。同じ男という性別で、しかも恋仲だ。お互いに、考えていることは同じだろう。

「さっ……さっきの続き……しなくて、いいのかよ……。」

俺は目を合わせられなかった。自分でも、言っていることがかなり恥ずかしいことなのは、充分に理解している。今俺の顔は真っ赤だろう。

「っ!……そりゃ、誘ってんのか?」

「……そうだって言ったら……どうすんだ?」

「っ……!!」

「うわっ……!」

抑えきれないと言うように、俺にのしかかってくる。手首を掴まれ、貪るような熱いキスを何度も繰り返した。

「んんっ……は、ん……っ……あ…っ……!」

熱を帯びた舌が出たり入ったり、唾液で口の周りはベタベタだった。口を離すと糸を引き、それは部屋の明かりで余計にいやらしく光るのだった。

「っはぁ……っ…コウ……この後、どうするんだ……。」

「ん……はぁっ……っ……お前の……好きにしていい……欲張りな、狼さんよぉ……。」

「いっ……いいのかよ……お前が、下で。」

「……ははっ……なんかもう、お前になら……なんでも許せる気がすんだ……つーかよ……。」

「うっ、く……!」

俺は足で黒永の下肢へと触れる。そこは、もう十分なほどに膨らんでいた。黒永のうめき声を聞き、背筋に電流が走ったような感覚に陥る。今、最高に興奮し、欲情している。こんなことは初めてだ。

「ふっ……もうこんなにして、そんなに欲しいのかよ。この変態野郎……見栄張ってんじゃねぇよ……。」

「っ……優しく、してやろうと思ったのに……!」

「うぁっ……く……!」

黒永は浴衣を剥ぎ取り、上半身をあらわにさせる。熱い舌が、胸の飾りを弄ぶように動き回る。敏感になったそこは、まるで女のようにふっくらと膨らんでいた。ちゅうちゅうと吸われ、甘い刺激が脳を溶かしていく。あまりの快感に声を抑えられない。

「んぁっ……はぁ…っ……だ、めっ……そこ、やぁ……!」

「っ……ククっ……お前こそ、俺みたいなのにアンアン鳴かされて……こんなエロい顔晒して……とんでもねぇ淫乱だな。」

「んぅ……くっ……だ、まれ……あっ……!」

下着に手をかけ、ズルリと下ろされると、自分の下肢も熱を帯びていた。膨れ上がったそれは、触られる度にビクビクと痙攣し、先から蜜をこぼすのだった。

「んっ……触って、欲しいか?……言わねぇと、ずっとこのままだぞ……。」

黒永は指で胸の突起物をつまみ、グリグリと刺激する。既に唾液で濡れているその部分は、真っ赤になりながらも、その刺激に悦び反応していた。

「あぅっ……あっ……や、っ……うぅ……!」

「ほら、ちゃんと言えって……どうして欲しいんだ?」

「あぁっ……!は、ぁ……んんっ……はっ……!」

胸を触り終えると、膝を持ち上げ、太ももに口をつける。更なる刺激に腰が弓なりになる。

「うぁっ!……あっ……い、ぁ……っ……前っ……さ、触って…ぇ……もっ……無理っ……!」

「ククっ……お願い、します……だろ?」

「んぅっ……!……おっ……ねがい、します……んっ……はやく……っ!」

「クハっ……Yes,my lord……。」

黒永は熱を帯びた欲望を躊躇なく掴み、上下に激しく動かす。突然の強い快楽に、思わず今までに出したことない声が出てしまう。

「ひぁっ……!……あぅっ……はぁ……あっ……!」

あまりの快感に声が上ずる。すると黒永も下着を下ろし、自身をあらわにする。大きな手が、2人のものを包み込むように握る。

「っ…はぁ……お前だけ良くなるとかっ……ずるいだろ……うっ……俺にも、いい思いさせろっ……!」

「はぁっ……あっ…熱、い……ぃ……あ、雨っ……もぅ……イ、くっ……んぁっ────!」

「ふっ……ん、……は…ぁ……っ…うっ────!」

同時に溢れ出した白濁は、俺の腹にこぼれ体を汚した。ドクドクと止まることのない熱は、互いの欲を更に掻き立てる。

「はぁっ……はぁっ……は、ぁ………っ……。」

「っ……はっ……はぁ……まだ、終わりじゃねぇからな。」

「はぁ……っ……はぁ……。」

荒い吐息が部屋を埋め尽くす。口の端を釣り上げた黒永は、次の行動に移る。

「指、舐めろ。」

「んむっ……!」

強引に指を押し込められ、息が詰まりそうだ。口の中を掻き回され、目から涙がこぼれる。

「んんっ……ふっ……ぐ、む……ふ……ぅ……!」

「っ……クヒヒっ……いい声だ。」

だんだんと黒永の内側の部分が見えてきたかもしれない。普段は周りに気を使えるとても優しいやつだが、本性はとんでもなくドSで、餌を喰い散らかす狼や野獣を思わせる、歪んだ性癖の持ち主だということ。しかし恐ろしさや凶暴さよりは、雌を惑わす妖艶な香りを漂わせる、たちの悪い狼だということだ。その狼に俺は喰われている。

「それじゃあ……うまくいくか分からんが……やるとするか。」

「んっ……?」

黒永は口から指を抜くと、下肢よりも下にある、蕾へと指を当てる。ぬるりとした指先が、異物を入れさせまいと閉まる入口を濡らす。

「おい……力、抜けって。」

「ひぅっ……む、無理だって……!」

「大丈夫だから……な?」

「っ……。」

軽く口づけをする。さっきのような強引で噛み付くようなキスでは無く、甘くとろけるような、優しいものだった。

「んぅ……ふ…んっ……っ……早く、しろ……。」

「っはぁ……いい子だ。」

「んんっ……!」

中を押し広げるようにゆっくりと入ってくる。滑りの良くなった指は、あっという間に根元まで入ってしまう。不思議な感覚と、感じたことのない刺激に、シーツを強く握りしめる。

「うっ……ぁ……くっ……はぁっ……はぁ……。」

「……入ったよ、全部……根元まで。」

「っ……言う、な……ぁ……!」

「今、いいところ探すから……もう少し我慢して。」

「あぁっ!……や、め……それ、やぁっ……!」