君に奇跡が起きますように



「……最悪」

ドアの前でじゃれる男女を見て思わずつぶやいた。

自分の母親と、多分客。

いい年したおっさんが、いい年したおばさんの肩を抱いている。


吐き気がした。

なんでこんな時間から……。


「ちょっ……!香奈」

母があたしに気づいてギョッと目を見開く。
それは多分、あたしがずぶ濡れだからで。


「やだ、濡れてるじゃない。どうし……」
「何、娘?」


男があたしを舐めるように見る。



……気持ち悪い。

「そーよぉ」
「へー。こんなでっかい娘いたんだ。お前に似ていい顔してんじゃん」


ニヤニヤ、と気持ちの悪い笑みを貼り付けたまま、あたしに近づいてくる。