はぁ、はぁ、息が切れる。
普段運動なんてほとんどしないから、すごく苦しい。
家に、帰りたくない。
だけど、今あいつの家に行っても誰もいない。
もう、1人になりたい。
あたしは足を止め、トボトボと歩き始めた。
するとしばらくして、小鳥遊の言ったとおり、雨が降って来た。
「……」
傘なんて持ってない。
かといって走る気にもなれない。
きっと、今日は厄日。
家に帰って着替えたら、ネットカフェでも借りて寝てしまおう。
「やだぁ。もぅ、まだお昼じゃない」
「いーからいーから」
アパートの前まで来ると、甘ったるい声と、低い声が聞こえてきた。
まさか、と思いながらステンレスの階段を上がる。

