「帰れ」
低い声がでた。
あたしが睨みつけながら凄むと、驚いたような顔であたしを見てくる。
「どうして?」
どうして、って?
「はぁ!?」
「俺は水澤さんのそばにいたいなぁ」
予想外の言葉に、あたしは少しうろたえる。
まさか、こいつ本当にあたしのことが好きなんだろうか。
もしそうなら、かなり趣味が悪い。
いや、やっぱり頭がおかしいのだ。
腹が立つ。
イライラと、胃の中から感情が湧き上がってくる。
だめだ、今日は誰とも話したくない。
例えこいつじゃなくても。
「目障りだからに決まってんだろ!!」
思わず声を荒げたあたしに、小鳥遊は怯える様子も、驚くこともなく。
ただ無言で立ち上がって、
「また明日、来るね」
柔らかく微笑んだ。

