「そいういう意味じゃない。アホか」
あたしは吐き捨てる。しかし小鳥遊は、変わらず微笑んでいる。
──空気、みたいだ。
ふとそんなことを思った自分に驚いた。
「どっか行けよ。つうか、何でここにいんの?」
「ここ、いつも通るんだ。相手が同じ女の子でも、三対一は無茶だと思うなあ。ほら、その証拠に一発食らっちゃったじゃん」
……ウザイ。ストーカーかよ。
見られてた。家が近所なのだろうか。
それはどうでもいいけど、こんな惨めな姿を見せるのは嫌だった。
こんなの、誰にも見られたくなかった。
自覚したくなかったからだ。
自分がどんなにアホらしいことをしているのか。
「お前に何が分かるんだよ……」
「んー、何も?」
肩を竦めて言う小鳥遊に、不思議と本気で怒れなくて。
こいつが纏っている、不思議な空気のせいだろうか。

