「痛ぇ……。畜生!!」


赤髪の女が吐いた唾には血が混ざっていた。


──お前らから喧嘩売ってきたんだろ。


相手を殴った拳が、じんじんと痛んだ。


あたしはそれを、手を振ることで紛らわそうとする。


あたしは別に、喧嘩がしたくて歩いてたわけじゃないのに。

この金髪とお世辞にも穏やかとは言えない目つきのせいで、よく喧嘩をふっかけられる。


どうせ殴られるなら、とやり返してみたのが始まりで。


それ以来、売られた喧嘩は全て買ってしまっている。


「行くぞ!!」

女がそう声を掛けると、取り巻きの2人もあたしにやられた体を庇いながら走って行った。