君に奇跡が起きますように



「ははは……。ほんと、アホらし」

そうかすれた声で言うと、なぜか涙が出そうになった。

小鳥遊は少しだけ眉を持ち上げた。


「ごめん……。迷惑かけた」
「いいよ。ゆっくり休んで」
「お前……親は?」

あたしが訪ねると、小鳥遊はあっけらかんと答えた。

「俺、一人暮らしだから」


そう言いながら、あたしの頭のタオルを交換した。

「あ、りがとう。……何でわざわざ一人暮らしなんてしてんの?」

何かを探すように、宙を睨んだ、小鳥遊。


「一人の時間がほしかったから?」
「何それ」
「まあまあ、俺のことはいいから。まだ眠そうだし、寝ていいよ。熱もあるしね」


滑るように頭を撫で、髪を梳く小鳥遊の手が心地よくて。

あたしは意識を手放した。