「……怒ってる?」 酸素マスクを外し、小鳥遊はあたしに問いかける。 あたしは答えなかった。 だって今口を開けばきっと、何かが溢れてしまうから。 「ずっと黙っててごめんね」 細い手を伸ばし、そっとあたしの拳に触れてくる。 小鳥遊は硬く握られたそれを、力の入っていない指で外そうとする。 「傷になるよ」 その力の弱さにも、泣きたくなってしまった。 力緩めると、小鳥遊はいつものように指を絡めて握ってきた。 「座って?」 俯いて、小鳥遊の顔を見ないようにしながら、促された椅子に座る。