君に奇跡が起きますように



「ありがとう、水澤さん」
「はぁ?何が」


聞き返すと、小鳥遊はいつもの仮面のような笑顔とは少し違う、心から嬉しそうな表情を浮かべた。

そんな表情に、内心では動揺していた。


初めて、小鳥遊の人間らしい顔を見た気がする。


周りの生徒たちは、あたしと小鳥遊が会話していることに驚いているのか、チラチラとこちらを見ながら通り過ぎてゆく。

「学校、来てくれて」
「別に、お前のために来たわけじゃないし」

それが居心地が悪く、早く教室に戻りたかった。


「うん。……でも嬉しい」


この人は、なんでこんなに嬉しそうなんだろう。理解できない。


「……」
「あれ?何も言わないの?怒られるかと思ったのに」


「諦めた」