「なんで、あたしが一歩近づいたら一歩逃げんの?」 「……」 そんな怯えたように、体を縮こませるな。 何に怖がってるんだよ。 わっかんねーよ。 「お前はずっと、自分の言いたいことばかりで」 「水澤さん」 「あたしの話なんか聞こうともしないで」 湧き上がってくる。 溢れてくる。 止められない。 今までずっと、指先を滑り落ちるのをただ眺めていただけの想い。 もうそれを無視することはできない。 1度自覚してしまったら、それは輪郭を得て、温度を生んでしまう。