水澤さんを好きになって知ったこと。
俺は結構独占欲が強い。
「……なぁ」
「んー?」
「人を好きになるって、そんなに大事なことなのか」
俺の胸を見つめながら、零すように水澤さんは言う。
んーー。
それ、俺に言う?
周りの人から見ればおかしなこの状況に、俺は苦笑した。
そんなところも可愛いと思うけれど。
「どうして?」
「……いっときの感情じゃんか。そんなのに振り回されて、周りに迷惑かけたり……。そんなの、おかしい」
俺の中に滲むように入ってくる。
まるで劇にありそうな台詞だった。
それが悲劇なのか、喜劇なのか。

