腕で俺の薄い胸板を強く押し、俺から逃れようとする。
だが、どんなに貧弱な俺でも、こんなに細い女の子に負けるわけがない。
「小鳥遊っ、それやめろっ」
髪から首に手を滑らせると、くすぐったかったのか、水澤さんは少し上ずった声を上げた。
その声も、俺を煽るだけだ。
バタ足のように動いている水澤さんの足に、自分の足を絡めてみせると、うろたえる声がして大人しくなった。
──ほら。
つい最近まで、目を光らせて喧嘩をしていた人が、普段は怒りっぽくてすぐに手を出す人が、俺の腕の中だとこんなに弱い。
それが、たまらない。

