誰かに殴られたことなんて何度もあった。
慣れていたはずだった。
でも、怖かったのは殴られたことじゃない。
あたしの存在を否定されることだった。
あたしの居場所など無いと、思い知らされることだった。
それは何より、辛くて怖い。
「あたしに、居場所なんか、ない……。もうわかんない……」
母親があたしを育てようとしていることは、十分わかってる。
だからあんな男に体を預けてまで働いて、学費だの生活費だのを稼いでいるのだ。
でも、それでも、荒れてしまったあたしと母の間にはもう、大きな溝ができているのだ。
「苦しい。辛い。みんなが当たり前に持っているものが、どうしてあたしにはこんなに遠いんだろう」

