それに、よく見ると口の端が切れている。
そこからは血がでていて、
頬にも痣ができかけていた。
まるで、そう。
殴られたみたいに。
経験者は語るってやつだ。
「なんだよ、その怪我……」
零すように口に出せば、かすれた声がでて行った。
どうして怪我なんかしているのか、考えようとしても頭が回らない。
「俺のことはいいから……立てる?
……水澤さん?」
ふと何かに気づいた小鳥遊は、驚いたようにあたしの頬に触れて来た。
グイッと何かを拭うように指を動かす小鳥遊。
その瞳はやはり不安げに揺れていた。
「どうして泣いてるの?」
「え……」
質問の意味、が、わからなかった。

