「水澤さん」
そいつ……小鳥遊は言葉通り、また路地裏にやって来た。
ジャージ姿で薄着の私とは対照的に、ちゃんと高そうなコートを着込んでいた。
「寒くないの?」
とあたしの正面に立って見下ろして来る。
あたしは小鳥遊の方を見ないようにしながら
「帰れよ」
ただそう言った。
「今日はどうして学校に来なかったの?」
そのあたしの言葉を無視して小鳥遊は重ねて質問をして来る。
あたしが学校に行かなかったこと、なんで知っているんだろう。
わざわざクラスまで見に行ってるのか。
そうとう暇なんだな。
「どうでもいいだろ」
「良くないよ、知りたい」
「うるさい」
心底うっとおしかった。
純粋で、全く汚れていないこいつが。

