傘を 返さなきゃいけない。
変な正義感と あのストーカーに
一言 文句を言ってやらないと
気が済まない。

晴れた日も 曇りの日も
その傘を 持って出かけた。

駅に着くなり 周辺を見渡す。

いない。

この颯爽とした 人混みの中で
一度あっただけの人を 見つけることは
困難なことだった。

数日たった ある日
そんな自分の行動が 急にバカらしく
思えてきた。

「この私を 待たすなんて…
傘の一本や 二本
律儀に 捉えることなかったのよね。
なにしてんだろ、私。笑」