「待て。」
葵が、歩き出そうとした
あたしの右手を掴んだ。
葵の手の温かさが
あたしの右手を通じて
リアルに伝わってきた。
「ちょっ…‼︎」
ビックリして
手を振りほどこうとするも
ビクともしない。
ードクンッー
どうしよう…
なんか分かんないけど
ドキドキする。
「今朝は悪かっ…」
「ひなたちゃんー‼︎」
ー‼︎ー
葵が何かを言いかけた時、
背後で誰かがあたしの名前を
呼びながら近付いてきた。
それと同時に葵が
あたしの手をとっさに離す。
「ひなたちゃん♪」
「宮原先輩…。」
近付いてきたのは、
宮原先輩だった。
「学校出る時、ひなたちゃんの
後ろ姿が見えて追いかけて来た♪
今日、たまたまサッカー部の練習
休みでさ♪まじ、ラッキー♪」
「…。」
宮原先輩が嬉しそうに話すのを
葵が黙って見ている。
「あれ⁇わり。
友達と一緒だった⁇」
それに気付いた宮原先輩が
あたしに問いかける。
「え…いや、あのっ…」
「別に。」
あたしの言葉を遮るように
葵が短く返事をして
あたし達の前から離れた。
「櫻木っ…‼︎」
あたしが呼んでも
振り返る事はなく、
葵はそのままどこかに
行ってしまった。
「櫻木…。」
何を言いかけたのか…
気になるじゃん…。
「なんか俺、悪い事しちまった…⁇」
「いえ…。」
宮原先輩があたしの顔を覗くも、
あたしはしばらくその場に
立ち尽くしていた。