葵の姿が見えなくなると
あたしは空き地に向かって歩き出した。



あんな無愛想で
全然笑わない奴なんて
初めて出会った…。


失礼だし、なに考えてるのか分かんないし。


「変な奴…。」








学校からしばらく歩くと
あたしがいつも寄る、
空き地が見えてきた。



そこに生える一本の大きな木。



「んん〜…。」


大きな伸びをして、
その木の下に横になる。


「はぁ…。気持ちぃ〜…。」





仰向けになって青空を眺める。
いろんな形をした白い雲が
どんどん流れていく。


こうして空を見ていると
嫌な事も全部ふっ切れる気がした。


あたしはいつもこうして
綺麗な星が見えるまで
空を眺める。


「いつからかなぁ…
こうして空を眺めるようになったの…」


この空き地はあたしが
小さい時におばあちゃんが
よく連れてきてくれた場所。

遊具も、何も無い場所だし
人だってあんまり来ない。


だけどなんでか分からないけど
すごく落ち着く気がした。


母が姿を消したあの日から
心のどこかで帰りを待ってたあの頃と

今のあたしは違う。



星を見てるとそんな汚れた
あたしの心も少しだけ
救われるような気がした。