「おい。」

ー‼︎ー



「へっ⁇」

その時

正門を通ったのと同時に
背後で誰かに呼び止められた。




「いや、あの、具合悪いから
帰ろうと思っ…て…⁉︎」







先生かと思い弁解しながら
後ろを振り向くと


そこにはなぜか葵が立っていた。



「は…⁇な、なんでここにいるの⁇」

状況が掴めないあたしは
分かりやすく動揺する。



「外眺めてたら、誰かさんが
帰ろーとしてんのが見えた。
なに⁇サボり⁇」


「ちょっ、サボりじゃない‼︎
そーいう櫻木こそ授業中なのに
ここにいていーの⁇
転校初日のくせに。」


表情を変えない葵に
あたしも負けじと突っかかる。



「別に。めんどくせーし。
前んとこでも授業なんて
まともに受けたことねーし。」


葵はそう言うと
面倒くさそうな顔をした。



なんか、こういうとこ
ムカつくなぁ…。



「ふーん。とにかく、あたしは
具合が悪いの。だから帰るの。
サボりじゃないからっ。
じゃあねっ‼︎」



あたしは葵を軽く睨んだ後、
背を向けて歩き出した。






「おい。待て。」



また呼び止められる。



「もおー‼︎なに⁉︎」


いい加減、頭にきたあたしは
勢いよく振り返った。



「‼︎」





「顔、腫れてる。」

「え…」


振り向くと、葵の顔が
目と鼻の先にあった。




ちちちちちち、近いっ‼︎



「ちょっ…‼︎」


「一応女なんだから
顔、大事にしろよな。」



そう言うとあたしの頭を
ポンっと軽く叩いた。



「一応って…」

「じゃーな。」



あたしの頭から手を離すと
葵は校舎の中に戻って行った。



一応女なんだからって…
失礼な奴…。




けど、心配…
してくれたのかな。一応…。





葵の姿が見えなくなるまで
あたしはただその場に
立ちつくしていた。