星空の日に





「だけど…医大って…。」

「ん。親父が進学したとこに行く。」

「…そっ…か。」




葵のお父さんも、
この街を出て進学した。

その医大に行くという事は、
葵もこの街を出るという事。


あたし達は離れ離れになる。




どうしようもなく…
胸が苦しくなった。





「…。」



言葉に詰まる。
なんて声をかけたらいいのか
全然分からなくなって…

気が付けば、涙をこらえていた。






「…ったく。」

「…‼︎」





そんなあたしを見た葵は、
そっと、あたしを抱き寄せた。



「そんな顔されたら行けないし。」

「だって…‼︎いきなりそんな言われても…。」

「今決めた事じゃない。
少し前から考えてた。」

「だけど…。」




葵のまっすぐな視線を、
あたしは直視出来なかった。


寂しい。嫌だ。
行かないで。


って言えたらどんなに
楽なんだろう…。


だけどあたしの我が儘で、
葵の将来を奪うような事も
出来るはずがなかった。





ーぎゅっ…ー



葵のブレザーをぎゅっと掴む。




「どうして医大に行くの…⁇」

「寂しい⁇」

「そんなんじゃ…。
今更どうしたのかなって…おもっ」







ースッ…ー

「‼︎」





あたしが問いかけようとした時だった。

葵はあたしの両眼を
優しく手で覆った。





「あのっ…葵⁇」

「俺がお前の目を守りたい。」

「えっ…⁇」

「お前の目も、お前も、
これから先は俺が守っていきたい。
親父がひなたの母さんを
守って来たように。
例えそれが上手くいかなくて
見慣れた物も、俺の顔も
全部見えなくなったとしても…
俺がお前の目になる。」




葵はそう言うと、あたしの
目から手を離して
ぎゅっときつく抱きしめた。



「だから…少しの間。
待っててほしい。」









葵の言葉の一つ一つが…
あたしの心の中の不安を
消してくれるような気がした。


素直に嬉しくて…
本当に葵の存在に感謝しても
しきれなかった。





「返事は⁇」

「…待ってる。
ずっとずっと待ってるから…
早く帰って来て…。」

「ん。分かった。」






葵の言葉にあたしが静かに頷くと、
葵は安心したように微笑んだ。