「去年は葵がこの木に
イルミネーション付けてくれて…
本当に嬉しかったのを覚えてる…。
片付けはサボったけどね‼︎誰かさんは(笑)」
「んー⁇そうだっけ⁇(笑)」
隣に座る葵は、あたしの言葉に
とぼけたように首をかしげた。
「いつかあたしの目も
お母さんみたいに見えなくなって…
見慣れたこの木も、街の風景も、
みんなの姿も…葵の事も
見えなくなるのかなぁ…。」
この一年、お母さんの病気の事を
考えると自分もいつかああなって
しまう日が来るんだと思うと
怖くて仕方なかった。
「ひなた…。」
「だからね、いつそうなっても
いいように今のうちに
見慣れたこの風景も…
みんなの顔も…
葵の全部を目に焼き付けて
おこうと思ってるの。」
あたしはそう言いながら、
不安を隠しきれないまま
力なく微笑んだ。
「決めた。」
「…え⁇」
あたしの話を聞いていた葵は、
そう言うと冬空を見上げた。
「俺、医大に行くわ。」
ー‼︎ー
「いだい…⁇
って、あの医大⁇」
突拍子も無い葵の言葉に
あたしの思考回路は停止する。
「あの医大って他にないっしょ⁇」
葵はそう言うと、クスッと笑った。
「え…だって葵、今から勉強するの⁇」
「お前、俺が頭良いの
知らないわけ⁇(笑)」
「…知らない。嘘でしょどうせ。」
「っち。生意気だな。
嘘だって思うんなら亮平に
聞いてみろっての。」
「いたっ…‼︎」
葵はそう言うと、あたしの
おでこにデコピンをした。

