星空の日に




ーガチャッー



家の中に入ると
しん…と静まり返っていた。


よく考えたら葵の家に、
こうして入るのは初めてだ。





「そこ、座ってて。」

「うん…。」


葵が指さしたソファに座る。




「…。」


辺りを見回すと、
棚の上に置かれている
写真が目に付いた。



小さい頃の葵と葵のお父さんと…
綺麗な女の人が写っている。
きっと…葵のお母さんだ。




『捨てられたんだよ。』






前に聞いた葵の言葉を思い出す。
胸が…苦しい。













「ん。飲め。」

「あ…。ありがとう。」



葵に渡されたマグカップを受け取る。


「葵…。」

「…どした⁇」


隣に座った葵は、
少し首をかしげながら
あたしの言葉に耳を傾けた。






「前に…これから先
何か大きな物を失ったとしても
葵の事は信じていてほしいって
そう…言ったよね⁇」

「言った。何があっても、
これからは俺が絶対そばにいる。」

「絶対なんて…
この世にはないの…。
あたしが信じてきた『絶対』は…
絶対に叶わない。
だから葵も絶対なんて…」

「で⁇何が言いたいの⁇」

「え…⁇」


あたしの言葉を遮った葵は、
少し怖い表情であたしを見た。




「簡単に言わなきゃわかんねぇんだけど。」

「だ、だから…
あたしのことは…」

「絶対なんか無いから。
だから俺のそばにはいられねぇって事⁇」

「…。」




葵の言葉に、言葉が出ない。




だって…
そうでもしなきゃ…
これから先、葵だって
きっと苦しんで生きて行く。

大好きだから…
だからこそ、葵には
ずっと笑っていて欲しかった。

あたしみたいに…
こんな思いはして欲しく無かった。







「お前に言った『絶対』は絶対だ。
こんだけ一緒にいてもわかんねぇの⁇
やっぱ、頭悪りぃな。」

「…。」









「お前が必要なんだ。
今までもこれからも。
だから余計な事考えないで
黙ってそばにいろ。」




ー‼︎ー








辛くて悲しい思いが、
あたしの心の中にどんどん
積もっていく中…

それを浄化していくような
温かい気持ちが流れた。



「別れない。以上。
まだなんかあんの⁇」

「葵っ…。」

「泣いたらブスになんぞ。」




葵はそう言って、
あたしの鼻をつまんで
意地悪そうに微笑んだ。