「ひなた…。」
一人、病室に残って
一点だけをぼーっと見つめていると、
しばらくして葵の声が聞こえた。
その声を聞いたあたしは
静かに後ろを振り返る。
「ここは…寒いだろう。」
葵はそう言うと、自分の着ていた
ブレザーをあたしの肩にかけた。
「ずっとね…考えてたの…。」
「ん…⁇」
「どんな気持ちで…あたし達家族の
前からいなくなったのか…。
いつ見えなくなるか分からない
そんな恐怖の中で…どんな風に
生きて来たのか…。家族みんなで
助け合いながら生きて行く事は
出来なかったのか、って…。」
「…うん。」
「だけど…いくら考えても…
全然分からなかったの…。
もっと早く…話してくれてれば
あたしはここまでお母さんを
恨まなかった…。ここまで…
酷い人間にはならなかった…‼︎
死んだお父さんや、おばあちゃんの
事を考えると本当にっ…苦しいの…。」
「…。」
葵は、溢れ出る涙を拭うあたしの背中を
ただ黙って優しくさすってくれていた。
「ありがとうって…
そんな簡単な言葉さえ
言えなかった…。」
「大丈夫…。大丈夫…。」
その日は本当に寒くて…
降り出した雪は、どこか
あたしの心を表すように
どんどん積もっていった。
辛く、悲しい思いが
どんどん、心の中で
積もっていく。

