星空の日に





ーグッー



弱々しい力で
離れかけた体を引っ張られた。




「…ひなた…。」

「…‼︎ひなこ⁉︎」




担架に乗せられる直前、
薄っすらと目を開けて
あたしの名前を呼んだ。



「ご…めんなさい…。」

「…‼︎」




幼い頃に感じた…
手の温かさ。


昔とは違ってガリガリに痩せた手。
だけどその温かさだけは
昔と変わっていなかった。



「なに…やってんのよ‼︎
なんで追いかけて来たりしたの⁉︎
何も見えないくせに…‼︎」



あたしは掴まれた手を振りほどき、
強い口調で突き放した。


「いつ…もあなたの事を…
思って…いたわ…。」

「っ…‼︎
そんなの…今更言われたって…‼︎
あたしはっ…」




ー‼︎ー



その時、
頬に温かいものを感じた。

血で染まった手で、手探りで
あたしの頬に手を当てる。





「最後に…あなたの顔を…
見たかった…。」

「‼︎」


「ひ…なた。
これからの…あなたをずっと…
見ていたかった…。」


「なに…弱気になってんの⁉︎
許してあげるから…
今までの事も全部っ…‼︎
全部忘れて何もかも
無かったかのように…‼︎
これからはあんたを
母親として見れるように努力するから…
だから…早く治して普通の
生活に戻ろうよ…。」


あたしは頬に当てられた手を強く握った。

辛かった過去は全部忘れて
これからは普通の生活に戻りたいと
心からそう思った。




「ありが…とう。
これで母さんは…安心だわ…。
あなたの…声や温かい感触…を
最後に感じられて…本当に幸せ…。」


だが、その思いとは裏腹に
か細くて消えてしまいそうな声に、
涙を流さずにはいられなかった。



「お母さん…‼︎‼︎
しっかりしてよ‼︎‼︎」

「…愛して…いる…わ…。」

「お母さんっっ‼︎‼︎
お願いだからこれ以上
一人になんてしないでよ…‼︎」

「…。」


ー‼︎ー




『愛している。』


お母さんは最後にそれだけ言うと、
薄っすらと開けていた目を閉じた。



「お母さん…⁇
お母さん…お母さんっ‼︎‼︎
嫌だ‼︎逝かないでぇ‼︎‼︎」

「ひなこ‼︎しっかりするんだ‼︎‼︎」


「脈がありません‼︎‼︎
急いで運ばないと‼︎‼︎」

「皆さんどいて下さい‼︎‼︎」


あたしが泣き叫ぶ中、
救急隊員の人達が
急いでお母さんを担架に乗せて、
救急車で運んで行った。