13年前ー
ある日、ひなこからの急な
電話で俺は呼び出された。
とある喫茶店。
「今…なんて⁇」
「だから…私を連れ出して欲しいの…。」
「お前何言ってんだ…。だってお前
ひろあきや、ひなたちゃんだって…」
「目が…見えなくなって来てるの…。」
「⁉︎」
「最初は…暗い所で物や風景が
見えにくくなったの…。
おかしいなって思って…
眼科に行ったの。
そしたら網膜色素変性症って言われて…。」
「網膜色素変性症だって…⁇」
「それからは…だんだん視野も
狭くなってきている気がするの…。
今の医学では進行を遅らせる事しか
出来ないって言われた。」
「網膜色素変性症は…進行性の病気で
何年や、何十年もかけてゆっくり進行
していく病気だ。必ずしも失明するとは
限らないが…そのリスクは十分にある…。」
「なおくん…お願い…。
私の病気を治して…。
完治は望まないから…
せめてひなたが成長していく姿を
薄っすらとでもいいから
この目で見ていたいの…。」
「ひなこ…。」
「お願い…。あなたしか
頼れないの…。」
「…長い闘いになると思うぞ…⁇
ひろあきは知っているのか⁇」
「まだ…話せてない…。
お父さんやお母さん、
ひろあきくんや…
ひなたにも誰にも知られたくない…。
こんな弱い母親の姿を
あの子には見せたくないの…。」
「ひなたちゃんに…
寂しい思いをさせるぞ⁇
それでも闘うか…⁇」
「…うん。」
「…。俺が行ってた医大の先輩を
頼ってみる。俺だけじゃなくて
その先輩もいれば安心だ。
視力が大幅に低下しないうちに
この街を出よう。
覚悟を決めたら…また連絡してくれ。
俺はその間準備しておくよ。」
「ありがとう…なおくん。」
* * *
「病気の事を聞かされた俺はただ…
幸せの真っ只中にいるひなこの事を
助けてやりたいと思った…。
そしてそれから3日経ったある朝。
俺はひなこを連れて街を出た。」
「じゃあいきなり、長い間
家に帰らなくなっては
たまに帰って来たりしてたのって…」
「そうだ。娘に会えないひなこの事を
思うと帰りづらかったんだが…
ひなこがたまには帰れと
言うもんだから…。
すまなかった…。お前にも
寂しい思いをさせたな…。」
「そんな何年も経った今、
なんでいきなりこの街に
帰って来たんだよ。」
「…。ひなこの希望なんだ。」
「ひなたの母親の⁇」
「ああ…。」

