「はぁ…。寒いねっ。」


どのくらい、
木の下に寄り添って
話をしていたのだろう。
吐く息が白くなる。


さっき、自販機まで
二人で買いに行った
温かいお茶もいつの間にか
冷たくなっていた。



「そろそろ戻るか。」

「…うん。」


楽しい時間が過ぎるのは
本当にあっという間で、
少し名残り惜しくなる。



「おばあちゃんはね…」

「ん⁇」




立ち上がる葵を
引き止めるように
あたしは口を開いた。



「苦しい時も嬉しい時も…
悲しい時も楽しい時も。
いつもここに来て、沢山
思い出を作ったんだって。」

「そうだったのか…。」

「だからね…あたしも…
苦しい時はここに来ていつも思うの。
何だって乗り越えられそうな気がして…。
あたしもおばあちゃんみたいに
幸せな思い出を沢山作りたいって。」

「一緒に作ればいいし。
これからも。」


葵はそう言うと、
あたしの手を優しく引いて
微笑んでくれた。



「これからも…⁇」

「当たり前だろ。
お前が嫌なら別だけど。」

「葵…。ありがとう。」



あたしも葵の手を
ぎゅっと握って立ち上がった。