「季節…」
「えっ?」
その人は静かに口を開いた。
「どの季節が一番好き?」
「えっと…別にないです…。
どの季節がいいとか、嫌だとか
あまり考えたことなくて。」
いきなりの質問に戸惑い、
ついそっけなく返してしまう。
「そっか…。俺はね~春が好き」
そう言うとあたしに笑ってみせた。
「なんでですか…?」
「ん~…新しいスタートがきれるから。
1年終えて、また頑張るぞーって思える。
その年の自分の良かった所も悪かった所も
全部ひっくるめて、0から
やり直せる気がするから。」
その人はどこか遠くを見つめて
そう言った。
新しいスタート…。
「強いて言うなら…」
「ん?」
「あたしは全部の季節が嫌いです。
今までもこれからも。」
あたしにとって
365日、心から生きてきて良かったって
思えることが無いから。
春も夏も
秋も冬も
親の温もりを感じないまま
育ってきたあたしにとって
生きる
それこそが一番の苦痛だから。
「なんかあったの?」
「いえ、別に…。」
その人の問いかけに
あたしはただ黙って
首を横に振った。

