それからあたし達は
夕暮れ時まで色んな話をしながら
沢山食べて沢山笑って、
楽しい時間を過ごした。
「はぁ〜もうお腹いっぱい‼︎
何も食べらんない〜‼︎」
早奈英はそう言いながら
お腹をさすっている。
「あたしももうギブ。」
久しぶりにこんなにご飯を食べたからか、
ちょっと苦しい…。
「じゃあそろそろ片付けるか。
ぼちぼち、蚊も出て来たし。」
「そうだね〜。ごちそうさまでした〜♪」
「あたし茶碗洗うよ。
早奈英と亮平は食材とか
色々運んでくれたし。」
「おう♪さんきゅ〜。」
あたしは椅子から立ち上がると
テーブルの上に並んだ食器を
何枚か重ねてロッジの中に入った。
蛇口をひねって水を出す。
ひんやりして気持ちよかった。
ーガチャッー
「⁇」
その時、背後のドアが開く音がした。
「ん。手伝う。」
「葵っ。」
後ろには食器を抱えた葵が立っていた。
「ありがとう。助かるよ。」
「ん。」
隣同士で食器を洗う。
あたしがスポンジで洗ったのを
葵が水ですすいでいく。
「…。」
「…。」
沈黙の中、食器を洗う音だけがする。
「ごめん。」
「え⁇」
食器を洗い終える頃に
葵が小さな声で呟いた。
「さっきの事。ごめん。」
葵はそう言うと
少しうつむきながら
あたしに謝った。
「ううん…。あたしの方こそごめん…。」
「嫌な思いさせた。悪かった。」
「え…違うの‼︎嫌な思いなんか…。
本当は…嬉しかった。
葵に少しでも近付けたみたいで…。
だから…謝らないでよ。」
食器を洗う手を止めて、
葵の方に視線を移す。
「大事にしてくれてること
ちゃんと伝わってる…。」
いつもそっけなくて、
何考えてるか分かんなくて…。
だけどいつも側にいてくれて、
あたしに優しい気持ちを
教えてくれる。
あたしも…
そんな風に葵に
思ってもらえてるのかな…。
「いつもいつも、ありがとう…。」
気付いたらあたしは
葵を抱きしめていた。
葵は少し驚いた顔で
恥ずかしそうにあたしの目を見る。
あたしもその目を
決してそらさなかった。
葵のおっきくて温かい手が
あたしの左頬に触れる。
目を閉じると、さっきと
同じように葵の顔が
近付くのが分かった。
「ひなた…。」
ーガチャッー
「「‼︎‼︎」」
その時だった。
さっきと同じタイミングでドアが開いた。
あたしと葵はとっさに
流し台の下にしゃがみ込んだ。
「亮平くんー‼︎どの辺に置いたのー⁉︎」
「ドア開けてすぐのとこー‼︎」
早奈英と外にいる亮平の
やり取りが聞こえてくる。
ドキ…ドキっ…。
心臓が破裂しそう…‼︎
あたしは葵に抱きしめられた
状態でバレないように
身を小さくしていた。
葵の心臓の音や、
息づかいもリアルに聞こえてくる。
「え〜。どこにあるのよ〜。」
ー‼︎ー
早奈英がロッジの中に
入って来るのが分かった。
流し台に近付いて来る。
もう無理…‼︎
「あ‼︎みーっけ‼︎」
やばいっ‼︎
「亮平くんあったよー‼︎」
ー‼︎ー
危機一髪とはこういう事なのだろう。
早奈英はあたし達に気付かないで
流し台から離れて外に戻って行った。
「…っはぁ…。危なかった…。」
あたしは止めていた息を
吐き出して胸を撫で下ろした。
「びっくりした…。ね、葵…」
「お前が悪い。」
ー‼︎ー
その時生まれて初めての
感触を唇に感じた。
柔らかくて…温かくて…。
「っはぁ…。」
ほんの数秒しかなかったのに
何分にも思えるくらい長く感じた。
「お前がそんな顔すっから…。」
「そんなっ…。」
心臓が速くてうるさい。
だけど…
こんなにも幸せな気持ちになれるなんて…。
「俺も一応男。
次そんな顔したら容赦しねぇから。」
ー‼︎ー
あたしの顔が真っ赤になったのを
見た葵は、悪戯っぽく微笑んだ。

