靴を履き替えて階段を上る。
さっきの光景を私は
何度も何度も思い出していた。
「早奈英〜‼︎」
ートントンッー
「‼︎」
その時後ろから肩を叩かれた。
「亜美っ。」
後ろを振り返ると
そこには亜美が笑顔で立っていた。
「びっくりした⁇♪
早奈英、同じクラスじゃなかったね〜。」
「え、あ、うん。そうだねぇ。」
笑顔で話す亜美の言葉も
今の私にはまったくと言っていいほど
頭に入って来なかった。
「って言っても隣の隣だけどね♪
たまには遊びに行くからね〜♪」
「うん…。」
「あ‼︎そう言えば‼︎
早奈英のクラス、亮平くんが
いるよね‼︎いいなぁ〜。」
「亮平くん⁇
まだ教室行ってないから
わからなくって…。」
私の聞き慣れない名前に
亜美は羨ましそうにしていた。
「えぇ〜‼︎知らないの⁇
この間話した私の友達がね
亮平くんとも同じ中学だったんだけど、
凄い優しいしかっこいいし
他中の子からも人気だったんだよ〜♪」
「へぇ…。」
あ…
もしかして朝の男の子⁇
そう言えば…
あの子が「亮平」って
呼んでた気がする。
あの二人同じ中学だったから
顔見知りだったんだ。
「佐々原さんは…」
「佐々原⁇あぁー、あたし同じクラス‼︎
もお〜最悪だよ本当に。
せっかく楽しい高校生活なのに
あいつがいるだけでなんていうか〜
場の空気が腐る‼︎(笑)」
あたしがあの子の名前を
言いかけたのと同時に
亜美は思い出したように
話し出した。
私は今まで見た事のない
亜美の態度に困惑する。
「ちょっ…そんな言い方…」
「だってみんな言ってるよ⁇
あ‼︎あのねクラスの子が言ってたんだけど
あの子の母親、男と逃げたらしいよ〜。
家庭環境が複雑って
その事だったんだね〜。」
とてもじゃないけど
聞いてていい気はしなかった。
私もあの子の事は
なに一つ知らないけど…
こんな風に言われるのは
私だってきっと耐えられない。
心が…痛い。
「亜美っ…」
「早奈英は同じクラスじゃなくて
良かったね〜♪あの子の目、
死んでるみたいで怖いから〜。(笑)」
私の中で何かがプツンっと
切れる音がした。
「亜美っ‼︎いくらなんでもそんな…‼︎」
「おめぇがひなたの何を知ってんの⁇」
ー‼︎ー
私が亜美に言いかけた時だった。
誰かが私と亜美の間に割り込んだ。

