星空の日に




トントントンー



ロッジに備え付けられている
キッチンであたしと早奈英は
野菜を切っていく。



「ねぇひなた⁇」

「なに⁇」


隣にいる早奈英は
持っていた包丁を置いて
あたしの顔を見つめる。


「葵くんと何かあった⁇」

「え⁉︎な、なんで⁇」


あたしは早奈英の言葉に
分かりやすく動揺する。


「様子が変だったから♪」

「ほ、本当に何もないの。」

「なぁ〜んだー。」


早奈英はつまんないと言いたそうな
顔で包丁を持ち直した。



「あのねひなた。」

「ん⁇」

「私、本当はひなたのこと
ずっと心配だったの。」

「え⁇」



早奈英は包丁を持ったまま
真っ直ぐに前を見つめていた。




「ひなたと初めて会ったのは
高校の合格発表の時。ひなた知ってた⁇」

「え⁇合格発表…⁇」

「うん。」











* * *









「早奈英ー‼︎」


「‼︎」




あれは中学三年の春。
辺りに桜の花びらが
舞い散って雲一つない日だった。

常楠高校合格発表当日。



常楠高校掲示板前にてー





「亜美〜‼︎おはよう♪」

「おはよう♪探したよ〜。
私1人で合格発表見る勇気なくて〜。」

「私も‼︎試験の出来、微妙だったから
正直不安なの‼︎」

「早奈英も⁇私も微妙だった〜。
あ、今から貼り出されるみたいだよ‼︎行こっ‼︎」


「あ、待って〜‼︎」





ードンッー

「あ‼︎すみませっ…。」




人混みの中に入って行く亜美を
追いかけようとした時、
誰かにぶつかった。



後ろを振り向くと
胸下までの綺麗な茶色い髪の毛の
女の子が立っていた。


「…。」



その時、あたしの言葉にも
顔を上げようとしない女の子を見て
私はなんだかその子の
悲しい過去でも見たかのような
気持ちになった。


そしてその子は誰と来たわけでもなく、
ただ1人で人混みの中へと消えて行った。



私は不思議な気持ちになり、
その場に立ち尽くす。



「ちょっと早奈英〜⁇
何してるの〜⁇急に
いなくならないでよー。」


「あの子…。」


「あの子⁇」



人混みの中から亜美が
私に声をかける。

亜美は私が指差す先を見た。




「あぁーあの子⁇
あの子って確か…。」

「知ってるの⁇」

「んー…。あ‼︎そうそう‼︎
確か佐々原ひなた‼︎」

「佐々原ひなた⁇」

「私の友達があの子と同じ
中学なんだけど、あの子
その中学じゃちょっと有名ならしいよー。
あの子凄く美人なんだけど
人を引き付けないオーラが
凄いらしくて誰も寄り付かないし
家庭環境が複雑っぽいよ。」

「そう…なんだ。」


「あの子も常楠受けてたんだね。
ほら、私達も早く見に行こうよ‼︎」

「うん…。」



私はそのまま亜美に引っ張られるように
その場を後にした。