星空の日に



「おぉ〜。わりと綺麗じゃね⁇」

「本当だ〜‼︎」


ロッジの中に入ると木の
温かみを感じるような
落ち着いた雰囲気の
綺麗な部屋だった。


「よいしょ。」


あたしも抱えていた荷物を
床に降ろして部屋を見回す。


「俺、管理人に道具とか
借りたり野菜とか肉とか、
注文してくるから待ってて。」


「あ、私も行く〜♪
葵くんとひなたは
ちょっとゆっくりしてて〜♪」


「え、あ、あたしも
一緒にっ…。」



ーバタンー



早奈英は亮平の後を
追いかけるように
部屋から出て行った。


あたしと葵は部屋に取り残される。



「ふぁ〜…。」


葵は部屋にあるソファーに寄りかかる。




「荷物置いてすぐ行かなくても
いいのにねっ…。行くなら
あたし達も行くのに。」


付き合ってからは一緒に
いることも増えたし
喋るのも前よりずっと慣れた。

けど…
こういう密室に
2人きりってなると
やっぱりドキドキしてしまう。



いつもは何も考えずに
会話できるのに
今はなかなか言葉が出てこない。



「立ってんの疲れねぇの⁇」

「え、あ、うん。大丈夫…。」


そんなあたしをよそに、
葵はいつも通りに
あたしに声をかける。



「なんかそんな風に
立ちっぱなしだと俺が
いじめてるみてぇじゃん(笑)」


「そ、そんなっ…。」


「こっち座れば⁇」


「…。」



葵はクスクスと笑いながら
あたしを隣に座らせた。



「疲れた⁇」


「んー、別に。」


「そっか…。」



あたしが問いかけると
短い返事が返ってくる。




「…。」




ダメだ…。
やっぱり上手く話せない…。
情けないなぁ…。
どうしよう。








「ひなた。」


「はい⁉︎」



あたしがそわそわしているのに
気付いたかのように
葵はあたしの名前を呼んだ。




「辛くない⁇」

「え…。」


葵はソファーから少しだけ
体を起こして真っ直ぐに
あたしの目を見つめた。



「色んな事あり過ぎて
辛い思いばっかしてるから。」


「葵…。」


そんな風に思ってくれてたなんて…。
予想外の言葉に胸が熱くなった。


「本当はね…考えても考えても
嫌な事を忘れる方法なんて
見つからなくて…。あの女の事を
許せる方法もあたしには
分からない…。今までの事を
思い出せば思い出すほど、
憎くて仕方ないの…。それに…」


「それに⁇」


「どうして葵のお父さん
なんだろうって…。
どうしてあたし達をこんなに
苦しめるんだろうって思うと
悔しくて仕方ない…。」




あたしの記憶から消えかけてた
あの女の顔を思い出すほど、
狂いそうなくらい憎くなった。

それと同時に…

人をこんなにも恨んでる自分が
どうしようもなく怖くなった。




「ごめん…。今日は
楽しい日なのに
初っ端からこんな暗い
話しちゃって…(笑)」



あたしは溢れ出そうな
涙を堪えて、顔を上げた。






「‼︎」





その時ー

温かいものを感じた。
葵の手であたしの体は包み込まれる。



「葵…⁇」

「なんもしてやれなくてごめん。」



葵はそう言うとさっきより
少しだけ強くあたしを抱きしめた。



不思議だなぁ…。
葵にこうされるだけで
あたしの心のモヤモヤは
あっという間にすーっと
晴れていく。


葵の胸にそっと耳を当てると
葵の鼓動が静かに伝わってくる。



「ありがとう…。」

「ん。」


あたしの言葉に葵は
いつも通り軽く頷いた。



少しだけ顔を上げると
葵と目が合った。


胸が…熱い。
顔も熱い…。

心臓が早くなる。



あたし達の顔が
少しずつ…
少しずつ近付いていく。



あたしは…
静かに目を閉じた。


そしてー