星空の日に






ーガチャッー



「おばあちゃんー‼︎」



あたしは玄関先で
部屋の奥にいるおばあちゃんを呼んだ。



「はいはい。どうしたんじゃ。」



おばあちゃんは
少し驚いた顔をして
エプロンで手を拭きながら
あたしに近寄ってきた。

足が悪いおばあちゃんは
左足を少し引きずりながら歩く。




「いってきますって
言ってなかったから。」

「わざわざ良かったのに。
明日には帰ってくるじゃろ。」


おばあちゃんはそう言うと
優しく微笑んだ。



「うん、そうなんだけど…。
やっぱりなんか心配で…。」


「心配性だねぇ。
何かあったらすぐに
連絡するから大丈夫じゃよ。」


「うん…。わかった。」



おばあちゃんは温かい手で
あたしの手を優しく握る。

そのおかげで少しだけ
安心出来た気がした。




「ひなたちゃん⁇これでもかってくらい
沢山遊んで、沢山笑ってくるんじゃよ⁇
辛くなったり悲しくなった時には
いい思い出っていうのは心の支えに
なるんじゃよ。今しか出来ない事を
今のうちにしとかなきゃねぇ。
おばあちゃんみたいに、ヨボヨボに
なってからじゃ出来ない事が
多すぎるんじゃよ。」



「心の支え…⁇」



「そうじゃよ。きっとこれから先、
ひなたちゃんの役に立つ。
どんな時も笑顔でいる事を
忘れたらダメじゃよ。」


「笑顔…。」






「ひなた⁇」



ー‼︎ー




あたしがうつむきかけた時だった。
あたしの後ろで葵の声がした。




「葵⁇どうしたの⁇」


「俺もおばあさんに
挨拶しに来た。」


葵はそう言うと、
口元を少し緩ませて
おばあちゃんに
頭を下げた。



「あらあら。葵くんまで。
年寄りのことは気にせずに
楽しんでくるんじゃよ。
ひなたちゃんをよろしく頼むねぇ。
また明日の夜、一緒に
ご飯でも食べようねぇ。」



「はい。ありがとうございます。
すぐ戻ってきますね。」



葵がそう言うと、
おばあちゃんは安心したように
微笑みながら頷いた。





「ほら、みんなが待ってるよ。お行き。」


「うん。行ってきます。」

「行ってきます。」




あたしはおばあちゃんの手を離して
葵と一緒に家を出た。

ドアが完全に閉まるまで、
おばあちゃんは優しく笑って
あたし達2人を見送った。