星空の日に





その後、しばらくおばあちゃんと話しながら
朝ご飯を食べた後、歯を磨きに
洗面所にいた。




昔から、鏡に映る自分を見ると
いつも悲しそうな顔をしていて苦しくなる。


小さい頃も控えめな性格で
よく、鏡の前で笑う練習をしたり…
毎朝、孤独な自分自身に
話しかけたりしていた。





「はぁ…。」






「ひなたちゃんー。
葵くん達が来たみたいじゃよー。」



ー‼︎ー


その時リビングにいるおばあちゃんが
大きな声であたしを呼んだ。


「今行くー‼︎」



あたしはコップに水を入れて
慌てて口をゆすぐ。









「おい、行くぞのろま。」

「‼︎」



口をゆすいだ後、
リビングに行こうと振り返ると
そこにはいつの間にか葵が立っていた。



「わっ‼︎な、なんでいるの⁉︎」

「荷物持ちに来た。」

「荷物…⁇」



あたしが問いかけると
葵は静かに頷いた。


「ありがとう…。」

葵の顔を見てると
なんだか照れくさくなって
あたしはうつむきながら
リビングに向かおうとした。




ー‼︎ー



その時だった。


あたしの左手は
葵に優しく引かれて
あっという間に
あたしの体は葵に
抱き寄せられていた。



ートクン…トクン…ー


心臓が脈打つのが分かる。



葵に聞こえたらどうしよう…。


あたしは、ドキドキしているのが
葵にバレないか、ひやひやしていた。





「顔。」

「え…⁇」



その時、
葵はあたしを抱き締めながら
静かに呟いた。




「笑えてない。」

「‼︎」





葵に言われ、あたしは我に返る。
鏡越しに自分の顔が見えた。




そう言われてみれば…
口元は引きつってるし
昔よりも酷い顔…。




「無理して笑う必要ない。
俺といる時は素のお前でいろ。」

「葵…。」



葵の言葉はいつも…
どこか説得力があって…
全然かなわない。



「葵も…辛いのにごめん…。
あたしの親だって葵の家庭を
壊した張本人なのに…
あたしだけ辛い気になってごめん…。」



そうだよね…。
あたしだけが辛いんじゃない。

葵だって…
毎日辛くて苦しいのに…。


頭では分かっていても
心が言う事をきかなかった。

苦しくて…
どうにかなりそうで…

一番大事な人の事ですら
理解しているようで
理解していなかった。





「あほか。俺は辛くない。
だから余計な事は考えんな。」

「けど…」

「お前が俺の分まで
笑ってりゃそれでいい。
だからもう…苦しむな。」




葵はそう言うと
さっきよりも強く
あたしを抱きしめた。


シャイでクールな葵。
こんなふうに抱きしめたり
優しい言葉をかけてくれたり
苦手なはずなのに…。




「うん…。」



あたしは葵の言葉に
静かに頷いた。













「おーい‼︎葵ーっ‼︎ひなたーっ‼︎
置いてくぞーっ‼︎」



ー‼︎ー





その時、玄関の方から
亮平の声が聞こえた。



「今行くーっ‼︎‼︎
葵、行こ⁇」

「ん。」





あたしと葵は
ゆっくりと体を離して
荷物を持って
洗面所を後にした。