「じゃあ、そろそろ行くな。」
葵はそう言うと立ち上がった。
「もう行くの⁇」
「もう遅いしな。また明日の朝迎えに来る。」
「うん…。」
あたしの頭に軽く手を乗せて
うつむいた顔を上げさせた。
「寂しいの⁇」
「そ、そんなことないしっ。」
「素直じゃねーな。」
葵は部屋のドアを開けて
階段を降りていく。
葵の後ろ姿を見ながら
あたしも後ろからついていく。
「どうもありがとうございました。
遅くまですみません。
ごちそうさまでした。」
葵はリビングを覗いて
おばあちゃんに声をかける。
「あらあら。
もう帰るのかい⁇
気をつけて帰るんじゃよ。
またおいでね。」
「はい。おやすみなさい。」
葵はおばあちゃんに頭を下げて
靴を履いて、外に出た。
「亮平によろしく
伝えておいてね。」
「ん。お前も早く寝ろよ。
明日の朝、寝坊したら
今度こそ置いて行くからな。」
「はーい。」
「じゃあな。」
「うん。バイバイ。」
葵は左手を軽く上げて
あたしに手を振りながら
背を向けて夜道を歩き出した。
あたしはその後ろ姿が
見えなくなるまで
ただ黙って見つめていた。

