星空の日に




それからあたしと葵は、
いつもの空き地の
木の下に2人並んで座った。





「女。」

「女…⁇」




葵はふぅ、と軽く
深呼吸して口を開いた。




「親父、最近家に帰って来なかったんだ。
どこで何してるかとか、別に
俺には関係ねぇーけど。
だけどさっき家にいたんだよ。女と。
俺と母さんの人生を狂わした奴ら。」



「葵と葵のお母さんの
人生を狂わした…。」


「俺がどれだけ惨めな思いをしてるか
あいつらは知らない。ぜってー許さねぇ。」




葵はあたしが今まで
見たことないような
暗く、怒りに満ちた目をしながら
夕暮れの空を見上げた。



あたしも…
あいつの事をこんな目で、こんな風に
憎んでたんだ。きっと…。

親の身勝手で…
あたし達は振り回されてる…。

あたしが葵を支えなきゃ…。
葵があたしを支えてくれているように…。




「あたしは葵を自分の身勝手で
見捨てたりしない…。
葵が笑っていられるように、
あたしみたいに生まれてきた事を
後悔しないように…
これからはあたしがそばにいる。
だから…いつもみたいに
笑っててほしい…。」



あたしは葵の手を両手で
優しく包み込んだ。



「葵が笑っててくれたら
あたしは何もいらない。」


「ひなた…。」


「ね…⁇」






「さんきゅ…。」






葵はあたしを見つめて
小さく笑うと
あたしの肩に寄りかかった。



「あ、葵⁇」



直に感じる葵の体温に
胸が熱くなるのを感じた。



「少しだけ。こうしてて。」



葵はそう言うと背中に手を回して
あたしの胸に顔を埋めた。




「ちょっ‼︎あ、あ、葵っ⁉︎」


いきなりの事で
あたしは酷く動揺する。

葵の肩を揺さぶる。




「…。」

「‼︎」




その時あたしは
初めて葵の涙を見た。

葵は何も言わないで
あたしにバレないように
静かに涙を流していた。



きっと…
ずっと苦しくて
誰にも言えなくて…
もどかしくて…



葵の気持ちを思うと
あたしも胸が痛んだ。




「大丈夫…大丈夫だよ。」




あたしはそれ以上何も言わずに
葵の背中を優しくさすった。