―キーンコーンカーンコーン―
授業の始まる鐘が鳴る。
「あ、早奈英!!授業始まるっ!!」
「うわわっ、早く戻ろーっ」
鐘が鳴ると、みんな一斉に
教室の中に戻っていった。
あたしも早奈英と一緒に走り出す。
「……」
あたしは廊下を走る中、
無意識に後ろを振り返る。
一瞬だけ振り返ると
男の子がこっちを見ていた。
気がした…。
「ねぇー、ひなたぁ
あの子かっこよかったねぇー♪」
教室に戻って席に着くと
早奈英がやたらとニヤニヤしながらそう言った。
「あたしは興味ないよ~」
「えーっ、絶対嘘~(笑)」
「な、なんでよ。」
「だってひなた、話しかけられた時
嬉しそうだったもん~?」
「ちょっ、バカ言わないでよー!!
言っとくけど、あたしはただ
道案内しただけの通りすがりの女。
そしてあの人は迷子の人。
それだけよ。うん。」
あたしは自分を納得させるように
大きく頷いた。
「なぁーんだ。面白くないのー」
早奈英はそう言うと
唇を軽く尖らせた。
「……」
あたしはただの道案内の女。
あの人はただの迷子。
それ以上でも、
それ以下でもない。
ポカポカ陽気の春の日差しが
妙に暑く感じた。

