「あ、そうそうっ。
早奈英たちがね、夏も終わっちゃうし
今度の週末にキャンプにでも
行かないか、って。」
学校が見えて来た頃、
あたしは早奈英が言っていた事を
思い出した。
葵の反応を伺う。
「お前行くの⁇」
「え、あ、うん。
行くつもりだけど…。」
「お前が行くなら行く。」
ー‼︎ー
葵は悩む様子も見せずに
短く返事をした。
あたしが行くなら
行くって…。
「葵、可愛いね(笑)」
「うぜぇ…。やっぱ行かない。」
あたしがそう言うと、
葵は顔を真っ赤にして
先に校舎に入って行った。
「待ってよ〜。」
あたしも葵の後を追う。
ードンッ‼︎ー
「いたっ…。」
その時、
前を歩いていた人に
あたしはぶつかってしまった。
ちゃんと前を見ろって
また葵に怒られる…。
あたしは葵にいつも言われている事を
思い出し、我に返った。
「あの…ごめんなさい‼︎
前見てなくて…。」
あたしは慌てて頭を下げた。
「ひなたちゃん、俺によくぶつかんね(笑)」
「⁉︎」
その声を聞いて、
あたしは勢いよく頭を上げた。
「み、宮原先輩‼︎」
「はは♪そんな化け物見たような
顔しないで(笑)意外に傷つく。」
「そ、そんな…。」
体育祭以来、
不思議なくらい宮原先輩と
会うことが無かった。
というか…
あたしが気まずくてずっと
避けてたんだけど…。
「あの…あの時はすみませ…」
「あー‼︎謝んないで‼︎
別にまだ諦めた訳じゃないし。」
ー‼︎ー
宮原先輩はそう言うと、
頭を下げかけたあたしの肩を掴んだ。
「もしあいつに泣かされたり、
辛い事があったら俺に言って⁇
そん時は今度こそ遠慮しない。
ひなたちゃんが振り向いてくれるなら
なんだってするって言ったっしょ⁇」
「そ、それは…。」
宮原先輩はあたしをまっすぐ見て
そう言うと、静かに肩から手を離した。
「今は我慢する。
だけど、今だけだから。
それと、ちゃんと前見て
歩くんだよ♪じゃあね♪」
「あのっ…。」
宮原先輩はそう言い残すと、
私の前から去って行った。
「おい。」
ー‼︎ー
宮原先輩が去った後すぐに、
背後で声をかけられる。
「葵っ…。」
「いつも前見て歩けって
言ってんだろ⁇」
ほらね…
やっぱり言われた。
「ごめん…。」
「あと…」
ー⁇ー
葵は廊下に座り込むあたしに
手を差し伸べながら呟いた。
「辛い思いなんてさせねぇ。」
「葵っ…。」
宮原先輩が言った事、
きっと聞こえてたんだ…。
「うん…。」
あたしは葵に微笑んで、
葵が差し伸べてくれた手を掴んだ。
大丈夫。
今までの人生よりも
辛い事なんてきっとない。
葵が隣にいてくれるなら
辛い事も、辛いなんて
きっと思わない。
あたしは改めてそう思った。

