「もうっ…葵ってば‼︎」
一瞬でも目を離すと、
人混みの中に消えていきそうな葵の
手をあたしはやっとの思いで掴んだ。
「なんで先行くの⁉︎」
「別に。」
「本当に自分勝手なんだから‼︎」
「うっせ。」
葵はそう言うと、
見るからに不機嫌そうな顔をして
そっぽを向いた。
「葵〜‼︎ひなた〜‼︎」
ー‼︎ー
その時、遠くの方から
あたし達に近づいて来る
亮平と早奈英の姿が見えた。
「葵くん、ひなた、
おはよう〜♪」
「おはよう早奈英。」
「ん。」
葵は朝と同じように、
短く返事を返す。
「ん⁇葵、お前なんで
朝から機嫌わりぃーの⁇」
不機嫌そうな葵の顔を
亮平が覗き込む。
「悪くねぇって。
おいバカ。はよ行くぞ。」
「お⁇お、お、おうっ。
じゃあな早奈英、ひなた‼︎」
亮平は葵に引っ張られて、
2人はあたし達の前から
いなくなってしまった。
「ひなた、葵くんに
何かしたの⁇」
「なんもしてないもんっ。」
早奈英に問いかけられて、
あたしは慌てて首を横に振る。
本当に何もしてない…と思う。
何も…。
あたしは状況がわからないまま
ただただ、その場に立ち尽くしていた。

