「お前がいいんだ」

「…なんで?」


桃太郎が猿をしっかり見つめます。


「お前、かなり頭がまわるだろう。
俺は鬼退治に行く。俺もそれなりに頭が良いと思っているが、相手は数が多い。必然的に守りも考えられたものになっているだろう。
そのときに俺だけじゃなくお前の頭もあれば、鬼どもの頭を上回れるはずだ。
それは、それだけの頭を持つお前だから頼んでいる」

「……ふぅーん?なるほどね、それで僕がほしいと。
でもやっぱり命かけるもんじゃないね、きびだんごじゃ。
そこは解決してないよ」

「だから別の報酬も考えてる」

「…なにさ」

「お前、今特に何かのために生きてるってものはないだろう。
だらだら、ただ生きてる。毎日つまらない。
もし、鬼退治に協力してくれて、成功したら、お前が何か生き甲斐と呼べるものを見つけることに協力する。
見つかるまで付き合うぞ」

「……それ、必要?」

「お前が欲しいものはそれなんじゃないのか」

「……はぁ、なに君、馬鹿みたいなセリフ吐いちゃってさ。
…まぁ、悪くないか。確かに毎日毎日食っちゃ寝食っちゃ寝でつまんなかったしね」

「……!感謝する」

「ふん、僕が協力するんだから成功間違いなしなんだからね、報酬はきっちりもらうよ」

「あぁ」

「じゃ、きびだんご頂戴。
言い出したのそっちだし、人間の食べ物って珍しいんだよね」


こうして桃太郎は猿をお供にしました。


「ねぇ、ちょっと、二人ともむずかしいはなししてて分かんなかったんだけど、何はなしてたの?」

「「…やっぱり馬鹿だな」」


桃太郎と猿はにやりと笑みを交わし合いました。