音楽のある日常

俺、伊藤 裕樹(イトウ ユウキ)は昔から音楽というものがあまり好きじゃなかった。他人が歌ってたり、テレビの主題歌やBGMなんかは平気だったが、なにぶん合唱やら合奏やらにはとにかく嫌いだった。
中学になると、それはもう酷かった。合唱発表会が近づくと、毎日のように合唱委員と喧嘩をしていたのを覚えている。結局、合唱発表会は全て欠席し、音楽の成績だけは通知表に「1」と書かれていた。
高校に上がると、合唱はなくなり、それはもう天国のようだった。ただ、新しくできた友達が中学の合唱発表会について話をしている時だけは、嫌な気分だったのを覚えている。次第にそれは会話に混じれない寂しさに変わり、中学の事を後悔していた。

高校生活も慣れてきた頃の事だった。俺に彼女ができた。彼女の名前は佐伯 友理(サエキ ユリ)。クラスでも別に目立ったところがあるわけではない、普通の女の子。特徴といえば、昔からピアノ教室に通っていて、小学校中学校と合唱の時は伴奏をしていた事くらいかもしれない。彼女ができたのは初めてじゃないけど、あまり思い出があるわけでもない。高校生になったって意識も合わさって、大事にしようって思った。