朝4時、枕元に置いてある携帯から、軽やかな木管楽器の音が流れる。私が中学1年生の時に、コンクールで演奏した、「青銅の騎士」という曲だ。

むくり、と上半身を起こし、毛布を退ける。3月で着々と春が近づいているとはいえど、朝と夜は肌寒く、ブルりと身震いした。


3月14日、今日は卒業式だ。


最後に着るカッターシャツの袖に腕を通す。このカッターシャツを着るのも、今日で最後なんだな、と考えると寂しさで、なんとも言えない気持ちになる。

制服をいつもよりもキチンと着こなし、鏡を見直した。


「うん、これでよし」


くるり、とその場で一回転をして、可笑しいところがないか見る。


「後は髪を巻かなきゃ」


ドレッサーの前に座り、ヘアーアイロンのプラグをコンセントに差し込み、電源を入れて温度調節のボタンを押し、限界まで上げる。

鏡に写る寝癖だらけの髪をクシでとかし、ヘアーアイロンの温度が上がるのを待った。