《短》弁当下さい



「最近、いらしてなかったですもんね」



「いやー、そーなんだよ!


ずっと残業と飲み会続きでさー。


ここのお弁当恋しくなっちゃって。


だから今日は佳奈ちゃんのおすすめが食べたい」



カウンターに腕を預け、こっちに乗り出すように


田中さんがニコニコとまくし立てる。


いつものことだけど、


田中さんってすごくフレンドリーなんだよね。



「飲み会続きなら、ご飯と高野豆腐と


ほうれん草のおひたしみたいな感じで、


薄味で、お腹に優しい組み合わせでどうですか?」



「あ、いいねー。


もういっこくらい肉付けて、それでお願い」



「はあい、ありがとうございます」



話途中だった彼に気づいて目を向けると、


彼はもういなくなっていた。


多分、接客を始めたから


話は終わりだと思ったんだろうな。


もっと話したかったけど、


向こうにしてみれば私はただのお店の人だから


その欲は下の方に押し込んだ。



結局、田中さんはご飯と高野豆腐と


コロッケを買って帰っていった。