「試合の前日はここのカツバーガーを
買うことにしてるんです」
単純ですよね、彼は笑いながら答えてくれた。
試合のために“カツ”バーガー。
素直なゲン担ぎが可愛い。
「そんなこと、ないですよ」
……あ、目があった。
ちょっと驚いた顔をしてる。
「試合頑張って下さい」
と言ってパンが入った袋を差し出す。
ありがとうございます、
と彼は私の好きな笑顔で返してくれた。
次の週、彼は来なかった。
「もう来なくなっちゃったわねー」
レジ前でお金を数えている私に
美里さんが声をかけてきた。
きっと試合で負けちゃったのだと思う。
「寂しいね」
「ちょっと寂しいですね」
次の試合のシーズンは、だいぶ先だ。
当分カツバーガーを買いに来ないだろう。
しばらく経って、学校で彼を初めて見つけた。
休み時間、移動教室で歩いてるときだった。
同じ学年の離れたクラスで、
友達と楽しそうに話していた。