子狐ハルの恩返し

「だめだよ?じっとしてないと」


少女は優しく僕に語りかけ、バッグから包帯をとりだし、傷の部分を包帯で巻いた。


「うん、大丈夫みたい」


少女はそう言って僕を持ち上げ、森へ入っていく。


乾いた地面に落ちている小枝や落ち葉が踏まれパキ、ミシッ、と可愛らしい音をたてる。


「よぉし…!森へお還り!!」


少女は僕を地面に優しく下ろした。


なんなんだ?何がしたいんだ?この人間……!!


僕は少女をじっと見つめていた。


「………?帰らないのかな?」


少女は僕を不思議に思い、少女も僕をじっと見つめる。


「………あ!もしかして遊びたいの!?君!私と遊びたくて私をじっと見つめているの!?」


少女はまたバッグから何かを取り出した。ボロボロになった中くらいサイズの熊のぬいぐるみだ。


ぬいぐるみはとても獣臭かった。


「これ、ワンダの玩具なんだけど……!」


少女はとても嬉しそうに僕に話しかけてくる。


人間は悪い生物。


母から言われてきたが僕にはそうは思えない。


体を張って僕を助けてくれた少女が悪いヤツには思えない。


しかもずっと笑顔を絶やさず、言葉は通じないが、僕に優しく語りかけてくれる。